近年続いている不景気やコロナが原因により、事業の継続が難しいという状況にある企業は少なくないと思います。
そういった時、手段の一つとして考えられるのが、事業の継承です。本記事では事業承継の概要、流れおよび事業承継支援についての説明をいたします。
事業承継の概要について
事業承継とは、経営者引退時に事業が継続され、その経営資源の引継ぎのことを指します。
中小企業庁が策定した「事業承継ガイドライン」では経営資源を下記に大別できます。
- 人(経営権や従業員)
- 資産(株式や設備、不動産など)
- 知的資産(ノウハウや知的財産など)
ちなみに事業とは上記の経営資源を利用した生産活動を指します。
事業承継の対象者について、引退した経営者を対象としたアンケートによれば、親族内承継が約5割、役員・従業員や社外への承継が約3割という比率となっています。
また、事業承継の効果については、2019年度版の中企業白書によれば、30代以下や40代の経営者に引継ぎすることで、売上高成長率や総資産成長率、従業員数成長率が向上したというデータが出ております。
事業承継の流れについて
事業承継の流れについてですが、こちらは事業承継の円滑な促進による中小企業の事業活性化を目的とし、中小企業庁が策定した「事業承継ガイドライン」をもとに下記の5ステップで行います。
ステップ1:事業承継の準備及びその必要性の把握
こちらでは、「事業承継診断書(前述の「事業承継ガイドライン」P91)」というツールを用いて、後継者の有無や後継の打診や後継準備への取り組み具合を判定の上、次にやるべきことを導き出します。
また、支援機関や経営者などで話を詰めていくものとなります。
ステップ2:経営状況および経営課題等の見える化
下記などのツールを用いて課題の透明化及び早期対処を促進します。
- 中小会計要領:中小企業の会計についてのあり方を示す資料。これを指針にして、計算書類を実態に即した状態で作成し、正確な財務状況をあぶり出します。
- ローカルベンチマーク:企業経営を評価するツール。財務情報だけでなく、業務フローや社内外の環境・関係者に関する項目を評価します。
ステップ3:事業承継に向けての経営改善
経営者による会社の競争力強化を図ります。
ステップ4:承継・引継ぎのための計画策定
親族内・従業員承継、もしくは社外へ引継ぎするかどちらにするかで実施内容が異なります。
前者の場合、後継者とともに事業承継計画を策定します。後者の場合、企業のマッチングサイトなどに登録し、マッチングを行います。
ステップ5:承継またはM&Aの実行
株式や資産を承継します。
参考記事:病気や事故で経営ができない!従業員承継の難しさ、M&Aという道について
事業承継に関する支援や特例措置などについて
事業承継における特例措置や支援内容を説明します。
また、下記の措置や支援を受けるためには、都道府県知事の認定を受ける必要があります。
相続税及び贈与税の納税猶予
非上場株式などを前代経営者から取得した際、一定の要件のもと、後継者が納付する相続税と贈与税が猶予されます。
具体的な数字は下記の通りです。
- 相続税:課税価格の80%
- 贈与税:課税価格の全額
ただし、後継者がすでに保有していた議決権株式含め、発行済完全議決権株式総数の3分の2までに限られます。
非上場企業の相続株式を自社に売却した際の課税特例
一定期間内に売却を実施した場合、一定の手続きを踏むことで課税率の低い譲渡益課税が適用されます。
特例措置について
下記の2点を満たせば、相続税の納税猶予割合の100%化、上記の対象株式の非制限化などの特例措置を受けることができます。
- 都道府県庁に「特例承継計画」を提出していること。(提出期限あり。)
- 相続・贈与により自社株式を取得していること。(実施期限あり。)
事業支援引継ぎ支援事業について
事業承継の円滑化推進のため、各都道府県に事業引継ぎ支援センターが設置されています。
そこでは、課題解決のための助言やマッチング支援などを行っており、回数は無制限の上、相談料は無料です。また、個人事業主と起業家のマッチングを行う後継者人材バンクも取り扱っています。
まとめ
以上が事業継承の概要と流れです。
一見難しく思われますが、支援制度等も揃っているため、それらをうまく活用し、円滑な事業継承を目指しましょう。