経営者が自らの会社の財政状況を把握する事は非常に大切です。なぜなら運営している会社のキャッシュフローや、売掛金、買掛金の状況等が正確に把握できていないと、経営の舵取りが上手くいかないからです。
どれだけ予算をかけられるのかがわからなければ新規事業の立ち上げもできず、どんぶり勘定で経営をしていると黒字倒産と言われるように、会社の存亡そのものを左右しかねない状態になることもあります。
だからといって経営者自らが経理を行えば良いと言うものでもありません。経理にかかる時間や労働力を他に回した方がより会社が発展するケースもあるでしょうし、単純に経理が苦手な方もいるでしょう。
社長が経理に時間を取られて身動きができない、苦手な分野で実力を発揮できない、というのは会社にとって損失です。
ですから社長に求められるのは、実際に経理を行うことではなく、会社の財政状態を正しく把握することです。もちろんそのために社長自身が経理を行うのが最も効率が良いのであれば、それ自体は悪いことではないと思います。
とはいえ、会社の財政状態を正しく把握するといっても、何をどう見れば良いのかわからないという方向けに、今回は特に重要なポイントを2つほどご紹介いたします。ぜひ参考にしてみてください。
損益分岐点売上高
損益分岐点売上高は、どれほどの売り上げがあれば黒字になるのかを表した数字です。単純な売上高ではなく、黒字になるための売上高だということがポイントです。
例えばA社とB社で同じ1000万円の売上高があったとしましょう。商品を売るにしてもサービスを提供するにしても、商品の開発費や原価、人件費にテナント代、光熱費や広告費といった諸経費がかかります。A社はそういった諸々の経費が700万円で、B社は1200万円だったとすると、同じ売上高なのにも関わらずA社は黒字ですが、B社は赤字です。
この場合、A社の損益分岐点売上高は700万円、B社は1200万円となります。
損益分岐点売上高を把握していれば、常にどれだけの売り上げを出せば利益になるかということを把握することができますので、毎月の売り上げを意識した経営を行うことができます。
また、損益分岐点売上高を把握するメリットは他にもあります。損益分岐点売上高は売り上げから費用を差し引いた額を基準にして計算されているので、当たり前ですが、損益分岐点売上高が低ければ低いほど黒字になりやすいという事になります。経営者が日々の会社運営を損益分岐点売上高について意識しながら行うことで、損益分岐点売上高をより低くするべく努力するようになります。
つまり、コストを抑えることも意識するようになるのです。このように、売上高のみに目を向けがちな経営者の視点を、その売り上げを出すためにはいくらの費用がかかるのかというように視野を広げることも可能です。ぜひとも明日からの経営の際には、損益分岐点売上高を意識してみてはいかがでしょうか。
貸借対照表を読む力
貸借対照表は、決算書の1つであり、会社の財政状態を表現しています。バランスシートとも呼ばれ、左右対象にそれぞれ資産の部、負債の部、純資産の部の3つに分かれています。経営者であれば、このバランスシートを具体的に読める力が必要になるでしょう。
しかし、実際にはバランスシートを本当の意味で読むことができる社長というのはあまり多くありません。バランスシートを全く見ない方や、見ることがあってもざっくりとした見方しかしない経営者も多いです。具体的には、資産の数字だけを見たり、純資産だけに着目するというふうに、かなり大まかな内容しか把握されていなかったりするのです。
このような見方をしていると多数の問題が発生します。
例えば資産の部に計上されている数字が100あったとします。しかしその100の内容として、現金と売掛金の比率が重要なのです。
売掛金とは、商品の販売やサービスの提供をすでに行っており、その代金が後日払いとなっているため、支払われることは決まっているものの、実際にはまだ支払われていないお金のことです。現金だろうが売掛金だろうが黒字ならそれでいいだろうと思われるかもしれませんが、実際に財務諸表上は黒字になっているにも関わらず経営が立ち行かなくなる、俗に言う黒字倒産をしてしまう会社は存在します。
会社を経営するためには手元にキャッシュが必要です。従業員に給料を払わなければなりませんし、毎月の売り上げを確保するためには商品を発注しなければなりません。あまりにも大雑把に売掛金ばかりで売上を上げていて、手元にキャッシュが残らなければ、本来は黒字なのに会社が倒産してしまうということが起こり得るのです。
このようなことにならないためにも、貸借対照表を読む力は必要です。
まとめ
今回は経営者として求められる力の中でも、特に大切な、損益分岐点売上高を把握する力と、貸借対照表を読む力の2つをご紹介いたしました。この2つの数字を意識するだけでも見通しをもった、より的確な経営を行うことができます。
損益分岐点売上高を把握していれば、そこから逆算した営業ができたり、適切な広告費のかけ方、また余分な費用を削るコストカットなどにも繋がります。貸借対照表を読む力があれば、より正確な会社の財務状態を把握できるため、黒字倒産などの悲劇から会社を守ることができます。
経営者が経理を行う必要はありませんが、会社の財務状態の正確な把握は必ず必要なことです。ぜひ今後の会社運営にご活用いただければと思います。